不安について

不安は、本来、自尊感情が十分に満たされている状態では生じません。周囲から認められ、尊敬され、自分という存在に対する満足感が得られていれば、不安は起きにくいのです。逆に、自分に対する評価が混乱し、自尊心が傷つけられるような状況、たとえば周囲から否定されたり、侮辱されたり、嘲笑われたりすると、脳は混乱し、不安が生まれます。

このときに起こる本来の正常な反応は「怒り」です。怒りは自己肯定感を再び取り戻すための抵抗反応であり、一時的に不安を覆い隠す役割を果たします。その後、徐々に精神的なバランスを取り戻し、日常へと戻っていくことが可能になります。

しかし、この正常な「怒り」の反応が出ず、不安が解消されないまま残ってしまう場合、問題が生じます。当クリニックでは、不安への対処として、薬物療法(抗不安薬の処方)だけでなく、不安を引き起こしている状況を客観的に分析し、その背後にある原因を探ります。たとえば、親子関係の不和が原因で、自分の感情を抑え込むことを学習してしまい、怒りを表現できず、不安を晴らせない性格傾向が形成されていることがあります。

このような長年身についた反応パターンは、無意識下で怒りを押し込み、問題解決への道を断ち、選択肢を狭めてしまいます。こうした「無意識」の癖を治療によって修正し、適切な感情表出や対処を習得することは、今後の人生をより豊かで安定したものにする上で重要な意味を持ちます。