ドーパミン依存について
近年、YouTubeなどで「ドーパミンが強く分泌される行動」について取り上げられることが増えています。ある動画では、低刺激から高刺激へと並べたリストが紹介されていました。その中には、「美味しいものを食べる」「ペットをなでる」「笑う」「タバコを吸う」「お風呂に入る」「旅行する」「マッサージを受ける」「きれいなシーツのベッドで横になる」「スポーツをする」などがありました。そして、最も強くドーパミンが分泌される行為として「バイクに乗ること」が挙げられていました。
ドーパミンは「快楽物質」とも呼ばれ、これが多く分泌される行動に人は依存しやすくなります。SNSで「いいね」を求め続けたり、ゲームに没頭したり、薬物に手を出すなど、刺激が止められない状態になった場合、それは「依存症」と言えます。
当クリニックにも、ゲーム依存症や薬物依存症を抱えた方が来院しています。こうした依存症治療には「ドーパミンファスティング」という手法を用いています。これは、ドーパミンを過剰に引き出す行為を時間的に制限し、徐々に刺激レベルを下げていくことで、脳を過度な快楽追求から解放し、通常の生活へ目を向け直す取り組みです。この期間中は、散歩や瞑想、読書など、低刺激で心身に良い活動を行います。
また、依存症には背景となるストレスや家庭環境、仕事上の問題がある場合が少なくありません。そのため、認知行動療法を通じて、生活上のストレス要因に目を向け、解決策を見出していくことも必要です。
例えば、ある薬物依存の女性は、依存の根底にある家族関係を改善することで、オーバードーズを回避できるようになりました。別の男性は、幼少期の環境やそれが引き起こした現在の家族関係に目を向けることで、禁酒を続けられています。
ドーパミン依存からの回復には、身体的な刺激に制限をかけるだけでなく、内面や環境を見つめ直し、自分自身をサポートしてくれる周囲との関係を再構築していくことが大切です。