トラウマについて
「心の傷(トラウマ)が後に精神的不調を引き起こす」という考えを提唱したのは、精神分析の創始者フロイトです。彼は無意識の世界に注目し、その重要性を説きました。その後、第一次世界大戦をきっかけに「戦争トラウマ」が社会問題となり、トラウマが精神医学の分野で重視されるようになりました。
トラウマは誰にでも起こり得るものであり、一説によると、人口100人あたり約1.4人がトラウマによるストレスを抱えていると言われています。特に問題となるのは、トラウマ体験がフラッシュバックし、さまざまな症状を引き起こすことです。
当クリニックにも、突然怒りを爆発させたり、引きこもったり、日常的な行動ができなくなったりする患者さんが来院されています。例えば、ある女性は、小学生時代に受けたいじめによるトラウマから「解離」という症状を発症し、自分とは異なる人格が現れるようになりました。この女性はトラウマと闘おうとしましたが、その過程で心が耐えきれず、解離という防衛反応を生み出したのです。
現在、トラウマ治療には抗うつ剤や漢方、抗てんかん剤などの薬物療法が用いられ、フラッシュバックの軽減が試みられています。また、認知行動療法を通じて、トラウマ体験を客観的に捉え直し、再認識する方法が実践されています。上記の女性の場合、いじめの体験は非常に陰湿で苦しいものでしたが、診療を重ねることで病的な人格を統合することができました。
トラウマは治療を受けることで、症状が短期間で軽減することもあります。